【 9|音にならない音色】

娘は、ギターを始めて2年くらいになる。

最近は、スマホでライブ配信をしながら歌っている。

少しずつ、聴いてくれる人も増えているみたい。

だけど、本人はよく

「自分なんてまだまだ…」って言っている。

プロの音源ばかりを聴いているし、

自分と同じように配信している人たちと、

どうしても比べてしまうらしい。

「下手だし」

「緊張しちゃうし」

「もっと練習しないと…」

そんなふうに言う娘に、リスナーさんが

「褒められたら、素直に喜んでほしいな」って

言ってくれたことがあったそう。

その気持ち、すごくよくわかる。

僕自身も「想いを伝えること」に関して、

できていない部分ばかりを見てきたから。

でも、こうも思うようになった。

“上手に歌いたい”というのと、

“伝えたい”というのは違う。

“緊張したくない”、というのとも、また違う。

伝えたいものがあるなら──

声が震えていても、

コードがずれても、

それでも、伝わる“何か”が、たしかにある。

ドライブ中にそんな話をしていた時、

僕は娘に、こんな問いを投げかけた。

「素敵な声の人や、すごい演奏の人がいたら、

それは“お前がやらない理由”になるの?」

すごい人がいるから、自分はやらない。

うまくできないから、やらない。

その選択が、どれだけ大切な何かを遠ざけてしまうか──

僕も何度も、痛いほど味わってきたから。

今、こうしてSNSに投稿しているのも、

誰よりも、自分自身に向けて、

問いを投げているところ。

「想いはあるけど、どう形にしたらいいかわからない」

「言葉にならないまま、胸にしまっていることがある」

そんな人に向けて、

少しずつ準備していることがある。

“売るための仕組み” というよりは、

“あなたらしい声” を自然に届けるための、

小さな道しるべのようなもの。

でもまだ、

全体像を伝えられるほどには、なっていない。

だから今は、投稿という形で、

自分の暮らしや感情を見つめ直しているところ。

自分の“音”を、

もう一度チューニングしながら。

もしかしたら、この投稿を読んで、

「何のために書いてるんだろう?」って、

思った人もいるかもしれない。

でもそれを感じてもらえるくらい、

余白のある言葉で届けたいと思ってる。

そして近いうちに──

この言葉たちが、ちゃんとした「形」になって、

誰かの一歩を、

そっと後押しできたらいいなと思ってる。

もし、あなたの中にも

まだ声にならない“想い”があるなら、

それはきっと──

あなただけにしか出せない“音色”が、

そこにあるということ。

耳を塞いで聞こえないふりや、

誰かの“好き”に振り回されたりせずに、

“あなたの音色”に耳をすませてあげて。

僕もまた、誰かに届けるためにではなく、

自分のために静かに──

音にならない音色に、

そっと耳を澄ませていたい。

しじまの中で、まだ名もなき想いが、

ゆっくりと育っていくように。

── Atsushi

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