【 7|持っていくもの、置いていくもの】

10年前、独立を決めたとき。

僕は、全部を手放すために旅に出た。

そして今度は、持っていくものを選ぶ旅。

当時は、子どもたちと一緒に

日本中を車でまわった。

飛行機ならすぐに着く場所も、あえて車で。

鹿児島の先まで、青森の先まで。

沖縄と北海道は、また別の旅で行った。

子どもたちに「この国の大きさ」を

肌で感じてほしかったし、

僕自身が、自分の人生の「土台」を

確かめたかったのかもしれない。

あのときは、「全部手放すため」の旅だった。

モノも、人間関係も、働き方も、価値観も。

自分の中の「当たり前」を、一度まっさらにしたくて。

だからパッキングも、

“何も手にしない自分”を確認する時間だった。

でも、今回は違う。

「何を持っていこうか」と考えている。

10年かけてようやく手にした、大切なものたち。

当たり前すぎて気づかなかったけど、

今では、自分の一部になっているもの。

弱点ではなくて、それも悪くないと思えるもの。

たとえば「声の大きさ」。

僕は小さい頃、母から

「男が大きな声を出すと怖いから、小さく話して」

と言われて育った。

その言葉がずっと残っていて、

気づけば、声を抑えるようになっていた。

でも社会に出ると、

今度は「聞こえない」「自信なさそう」と言われ、

「自分の声はダメなんだ」と思い込むようになった。

でも独立してから、

「その声、落ち着くね」「安心する声だよ」

そう言ってもらえることが増えた。

最初はお世辞だと思ってたけど、何度も言われるうち、

少しずつ、受け取れるようになった。

気づけばその声は、

近くの人に「そっと伝える」には

ちょうどよかったのかもしれない。

主張しすぎないからこそ、

相手の声にも気づけたのかもしれない。

そういえば、数年前までメルマガも書いていた。

1万人以上の人に届けていたこともあって、

「あなたからのメッセージ好きです」

「初めて誰かのメルマガに返信しました」

そんな言葉をいただいたこともあった。

それは本当に嬉しかった。

でもどこかで、申し訳なさもあった。

「自分は物書きじゃない」

「誰かに何かを伝えるような人間じゃない」

そう勝手に思い込んでいたから。

でも、そんな“思い込み”こそが

自分の可能性に蓋をしていたんだと思う。

誰かに言われた何気ない一言から、

他の選択肢を考えなくなっていたこと。

きっと、誰にでもあると思う。

もちろん、気づくには内省も大事だけど、

本当の意味で自分を肯定できるようになるには、

誰かからの“まなざし”も、大きな力になる。

たとえ忘れていたような小さな出来事でも、

そこにこそ、自分や誰かにとって必要な、

大切なギフトが眠っているのかもしれない。

──あなたは、どんなものを眠らせていますか?

モノではなく、心の奥にあるもの。

忘れてしまっていた些細なことの中に、

あなたの可能性を閉じていた“鍵”がある。

それは、あなた自身が

一番気づいていなかったものかもしれないね。

気づかないふりをしていた“鍵”が、

ほんとうは、ずっとあなたの中で

静かに光っていたはずなのに。

今日も、おつかれさま。

いまのあなたが、ちゃんと選んできたもの。

そして、これから選んでいくもの。

そのすべてが、

あなたという人を形づくっているんだと思う。

どうか、自分の中にある“ギフト”を、

もう一度、大切に見つめてあげて。

─ Atsushi

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