どうしてあんなに、やさしく響くんだろう。
料理でも、手紙でも、部屋のしつらえでも。
そこに“心”が宿っているものは、すぐにわかる。
たぶん僕らの感覚は、言葉じゃなくても、
ちゃんと受け取る力を持っている。
でも──
想いだけじゃ、届かないこともある。
「伝えたい気持ちはあるのに、言葉にできない」
「頭の中では見えてるのに、形にできない」
そんな声を、これまでたくさん聞いてきた。
そして僕自身も、まさにそうだった。
「応援します!でもそれ、どうやってやるんですか?」
「その想い、共感します!でも、仕事になるんですか?」
そう言われて、胸の奥で小さくため息をついてきた。
そしてそのたびに、現実を痛感した──
僕は以前、製薬会社に12年勤めていた。
「本質的な健康って何だろう」と悩んだ末、
子どもとの時間を大切にしたくて、退職を決めた。
子どもたちの成長を、近くで見守りたかった。
一緒に過ごせる時間を、大切にしたかった。
言ってることとやってることが一致している
かっこいい父親でいたいと、心から願っていた。
それなのに──
当時の僕には、“想い”しかなかった。
「こう生きたい」と願ってはいたけれど、
仕事も、自信も、仕組みも、”伝える術”もなかった。
だからこそ、悲しかったし、悔しかった。
どんなに真剣に想っていても、
アイディアだけでは誰にも届かない。
それは、誰にも知られないまま、
静かに消えていった。
だから、夢や想いを語ったときに、
現実の問いに跳ね返されて、
静かに諦めていく人たちの気持ちが、痛いほどわかる。
でも、それは“想いが足りない”からじゃない。
“カタチにする方法”を、
まだ知らなかっただけなんだと思う。
想いをカタチにするには、少しコツがいる。
一人でできることもあれば、
誰かとだから形になることもある。
それを見極めるのもまた、
カタチにする力のひとつかもしれない。
誰に届けたいのか。
どの順番で見せれば、伝わるのか。
どこまでを見せて、どこを留めておくのか。
そういった「流れ」や「設計」があるだけで、
想いの輪郭が、少しずつくっきりと見えてくる。
仕組みは、冷たいものじゃない。
仕組みは、想いを伝えるためにある。
想いだけじゃ届かない。
でも、仕組みだけでも響かない。
だから僕は、どちらも大切にしたいと思っている。
モノより、物語を。
言葉より、想いを。
そして、その想いをちゃんと“カタチ”にして、
必要としている誰かに届くように整えていくこと。
それが、僕がこれまでしてきたことでもあり、
これからも、続けていきたいこと。
あなたにも、きっとあると思う。
まだ形にはなっていないけど、
心の奥で、ずっとあたためてきたもの。
もしそれがあるなら、
無理に引っ張り出したり、雑に扱う必要はない。
まずは──
そっと手にとってみてほしい。
当時の僕のように、
まだ言葉にしてしまうのが怖くて、
ずっと胸の奥にしまっている想いが、
あなたにも、もしかしたらあるかもしれない。
それでも──
それをちゃんと受け取ってくれる誰かが、
その先に、きっといる。
そして、僕も──
叶うなら、その“想い”をそっと受け取って、
あなたの想いを縁取る一人でありたい。
もし、そんな想いを胸にしまっているあなたが、
この文章にそっと目を通してくれていたのなら──
それだけで、なんだか嬉しくなる。
今日も一日、おつかれさま。
── Atsushi
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