【 6|想いを、カタチに】

誰かの想いが込められたものって、

どうしてあんなに、やさしく響くんだろう。

料理でも、手紙でも、部屋のしつらえでも。

そこに“心”が宿っているものは、すぐにわかる。

たぶん僕らの感覚は、言葉じゃなくても、

ちゃんと受け取る力を持っている。

でも──

想いだけじゃ、届かないこともある。

「伝えたい気持ちはあるのに、言葉にできない」

「頭の中では見えてるのに、形にできない」

そんな声を、これまでたくさん聞いてきた。

そして僕自身も、まさにそうだった。

「応援します!でもそれ、どうやってやるんですか?」

「その想い、共感します!でも、仕事になるんですか?」

そう言われて、胸の奥で小さくため息をついてきた。

そしてそのたびに、現実を痛感した──

僕は以前、製薬会社に12年勤めていた。

「本質的な健康って何だろう」と悩んだ末、

子どもとの時間を大切にしたくて、退職を決めた。

子どもたちの成長を、近くで見守りたかった。

一緒に過ごせる時間を、大切にしたかった。

言ってることとやってることが一致している

かっこいい父親でいたいと、心から願っていた。

それなのに──

当時の僕には、“想い”しかなかった。

「こう生きたい」と願ってはいたけれど、

仕事も、自信も、仕組みも、”伝える術”もなかった。

だからこそ、悲しかったし、悔しかった。

どんなに真剣に想っていても、

アイディアだけでは誰にも届かない。

それは、誰にも知られないまま、

静かに消えていった。

だから、夢や想いを語ったときに、

現実の問いに跳ね返されて、

静かに諦めていく人たちの気持ちが、痛いほどわかる。

でも、それは“想いが足りない”からじゃない。

“カタチにする方法”を、

まだ知らなかっただけなんだと思う。

想いをカタチにするには、少しコツがいる。

一人でできることもあれば、

誰かとだから形になることもある。

それを見極めるのもまた、

カタチにする力のひとつかもしれない。

誰に届けたいのか。

どの順番で見せれば、伝わるのか。

どこまでを見せて、どこを留めておくのか。

そういった「流れ」や「設計」があるだけで、

想いの輪郭が、少しずつくっきりと見えてくる。

仕組みは、冷たいものじゃない。

仕組みは、想いを伝えるためにある。

想いだけじゃ届かない。

でも、仕組みだけでも響かない。

だから僕は、どちらも大切にしたいと思っている。

モノより、物語を。

言葉より、想いを。

そして、その想いをちゃんと“カタチ”にして、

必要としている誰かに届くように整えていくこと。

それが、僕がこれまでしてきたことでもあり、

これからも、続けていきたいこと。

あなたにも、きっとあると思う。

まだ形にはなっていないけど、

心の奥で、ずっとあたためてきたもの。

もしそれがあるなら、

無理に引っ張り出したり、雑に扱う必要はない。

まずは──

そっと手にとってみてほしい。

当時の僕のように、

まだ言葉にしてしまうのが怖くて、

ずっと胸の奥にしまっている想いが、

あなたにも、もしかしたらあるかもしれない。

それでも──

それをちゃんと受け取ってくれる誰かが、

その先に、きっといる。

そして、僕も──

叶うなら、その“想い”をそっと受け取って、

あなたの想いを縁取る一人でありたい。

もし、そんな想いを胸にしまっているあなたが、

この文章にそっと目を通してくれていたのなら──

それだけで、なんだか嬉しくなる。

今日も一日、おつかれさま。

── Atsushi

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